SUUMOが注目する 住まいの兆し
2016
TREND!
住民主体で、より住み心地の良いマンションに 住民経営マンション

2000年代前半から増加した湾岸タワーマンションが1回目の大規模修繕を迎えます。
湾岸に限らず、修繕積立金不足、関係性の薄さ、管理意識の低さなどの問題が表面化。
その一方で、マンションを「資産」と考える人は増加しています。
職場以外のコミュニティでパラレルキャリア志向をもって積極的に理事長になる住民も登場。
住民経営度の高いマンションが、新しいマンションの価値モノサシを築き始めています。
「住民経営マンション」とは?

分譲マンションの管理は管理会社主導で運営されているケースが一般的です。そんななか、時間に余裕のあるシニア層が理事長となり、マンションの不具合を自主的に改善していくような動きは従来よりありました。
しかし、最近では企業勤めの若い層が自ら理事長等に立候補。『企業経営』視点をもって、マンションの価値を上げようとする動きが生まれています。ホームページやSNSを活用した情報発信、ビジョンや戦略の策定、なかには複数のマンションで連携するような動きなども。そのようなマンションを「住民経営マンション」と名付けました。
TOPIC1 従来からあるマンション管理の4つの課題
- 1
段階的に増額する修繕積立金の不足懸念
- 2
住民の高齢化、相続空家などの将来不安
- 3
顔すら知らない関係性の薄さ
- 4
理事会/総会への参加意欲の低さ
TOPIC2 新しい潮流変化~資産価値意識の高まり~
この10年ほどの間に、マンションを資産としてとらえて購入する層が約2倍に増えています。
Q 新築マンション購入を思い立った理由は?

- ※
「資産をもちたい、資産として有利だと思ったから」と回答した人の割合
TOPIC3 「住民経営マンション」の特徴
マンションの住民同士の交流を促すイベントを企画したり、修繕積立金の見直し、ホームページなどを活用した外部への発信、理事が変わってもぶれないための理念、ビジョンの策定など。なかには複数のマンションが連携し自治体に働きかけるものまで、さまざまな手法が登場しています。
1. 住民同士で主体的にイベントを開催、コミュニティ形成へ

マンション内で住民交流のイベントを住民主体で開催。住民間の交流が盛んに行われるきっかけとなり、「住民経営マンション」への第一歩として取り組むマンションが増えています。
2. 長く安心して住み続けるために修繕積立金の見直しなどを行う

段階式に上がっていく修繕積立金の計画だと将来の積立金不足等の不安があるため、それを見直し、料金を平準化するなど、長く安心して住み続けられる取り組みを行っていきます。
3. 価値をアピールするため内外へ情報発信を行う

管理組合自身でホームページやfacebookなどを利用し、物件の魅力を外部へ情報発信。外部の人に魅力を感じてもらえる価値づくりを積極的に行います。
4. 理事が変わっても住民経営を続けるために、理念・ビジョンを定める

理念・ビジョンを策定、共有することで住民合意形成を行いやすい環境を構築。理事メンバーが変わっても永続的に住民経営が続けられる仕組みつくりを行っていきます。
5. 複数の「住民経営マンション」が連合し、地域コミュニティを形成

付近のマンション同士がタッグを組み、連合体を形成。行政へ働きかけ、路線バスの新設や増便など住みやすさ向上のための取り組みを行っているケースもあります。
TOPIC4 「住民経営マンション」を支える事業者も登場
住民経営を第三者的立場から支える事業者も登場してきました。住民同士の交流を促すイベントの企画・運営といったコミュニティ支援や、大規模修繕・長期修繕計画のコンサルティングといったハード面やお金に関するものなど、そのサービスは広がりを見せています。

植栽管理をきっかけに住民経営を支えるのが東邦レオ株式会社。花の植え替えイベントなどによるコミュニティ形成支援に加え、外構を中心にした長期修繕計画の見直しの提案や、ビジョン策定・方針策定を行うワークショップの開催など、変革したいという想いをもった理事をバックアップしています。

マンション共用部を活用した行事運営を請け負い、ヨガ、英会話などのカルチャー教室や、音楽イベント、農業体験ツアーなどを実施しているのは株式会社ディグアウト。 住民専用のコミュニティサイトの作成も行っており、ソフト面・ハード面双方から「住民経営マンション」の管理活動を支えています。
TOPIC5 「住民経営マンション」の先にあるものは?
「住民経営マンション」は、マンションを『資産』とし、魅力ある住まいとして資産価値を維持したいと考えている住民が多ければ多いほど、生まれやすいといえるでしょう。都内湾岸エリアを中心にこの兆しが広がっていったことも、自身の住むエリアに魅力を感じ、誇りをもってさらなる価値向上に取り組んでいるからと考えられます。
「立地は変えられないけれど、住み心地は住民自身で変えられる」。このような意識をもって住み心地改革に取り組む住民経営度の高いマンションが、新しいマンションの価値を築き始めるかもしれません。