ホーム>Sumai for Smile>社内勉強会「SUUMOソト大学」第5弾 「人口獲得競争が起きる中、人気のある郊外とは?」

社内勉強会「SUUMOソト大学」第5弾
「人口獲得競争が起きる中、人気のある郊外とは?」

  • ライフ
  • ワークスタイル
  • 住まいトレンド
  • 未来予測
  • 調査
  • 2017年10月13日

“住まいカンパニーの外側を知る”をコンセプトに、業界の先端事例について理解を深める試み、「SUUMOソト大学」。毎回、住まい・暮らし領域における外部の専門家や企業を招き、業界の最前線を学ぶというもの。第5回となる今回は、「人口減少が深刻化する中、郊外開発をどうしていくのか」をテーマに開催された。

人口が増える街と減る街は何が違う?「人を集められる郊外」の条件と課題

都心の人口が増加している。一方、郊外では人口の奪い合いが起こり、人口が増加する街と減少する街の二極化が進む。「人口減少が深刻化する中、郊外開発をどうしていくのか」がテーマの第5回勉強会は開始以来、過去最多の参加者となり、テーマへの関心の高さ、講師への期待がうかがえた。

冒頭で司会者から「1970年代から80年代にかけて開発が進められたニュータウンに、いま異変が起きています。主に都心から30〜50kmの郊外で人口の減る街がある一方、増えている街もあるのです。人口が減る街と増える街では何が違うのか、どうすれば活気ある街へと生まれ変われるのか。今日はお二人の専門家とともに考えます」という説明の後、本編がスタートした。

最初に登壇いただいたのは、社会デザイン研究者の三浦展氏。都市問題、家族、消費、若者に関する研究の第一人者である三浦氏には、東京23区を取りまく郊外の現状、人を集められる街の条件についてお話しいただいた。

三浦氏 ここ10年ほど23区の人口は増え続け、郊外の人口は減少しはじめています。しかし郊外も一律に減っているわけではない。人口の増えている街もある。つまり郊外同士での「人口の取り合い」が起こっているのです

三浦氏は自身の最新刊、『東京郊外の生存競争が始まった!』(光文社新書)から23区周辺自治体のコーホート別人口のデータを引用。コーホート別人口とは、同年に出生した集団を軸に人口変化をとらえるデータである。これを基に世代別の変化の特徴や転出入の相関関係を明らかにし、自治体ごとに解説した。なかでも人口が顕著な伸びを示していたのは千葉県流山市だ。

三浦氏 流山は「母になるなら流山市」というキャッチコピーを掲げ、積極的な人口増加施策を打ち出しました。保育園の増設と送迎バスサービス、小中学校と図書館が一体化した施設の新設、子連れの親も楽しめる夜カフェの開催などがその具体策です。子育て支援だけでなく、仕事復帰をしたい女性向けの就労支援にも力を入れた。快速なら秋葉原まで約20分というつくばエクスプレスの存在も大きい。結果、子育て世代と子どもの数が増え、2003(平成15)年に15万人だった人口は今や18万人となっています

人口の減る街と増える街を比較分析した三浦氏は、人を集められる街には共通点があると考える。

三浦氏 選ばれる街は「美しい街」よりも、「楽しい街」だと思うんです。仕事の選択肢があって子育てがしやすい。昼の楽しみだけでなく、夜の娯楽もある。身近においしい店、面白い場所がある。そんな街です。今の時代は女性が働くのが当たり前。今後は専業主婦に頼っていた地域のネットワークづくりを男性や高齢者、若者も担い、地域の力を維持すべきでしょう

最後に三浦氏はコミュニティリビング「コムビニ」について説明。空き家などを活用して社交や仕事の場、学童保育などの機能を備えた「地域のリビングルーム」をつくり、地域を活性化させることを提案した。


街全体の資産価値を上げる!人口の増え続ける街「ユーカリが丘」の戦略とは?

続いて登壇したのは、山万株式会社専務取締役の林新二郎氏。同社は1964(昭和39)年頃から不動産事業を開始し、ニュータウンの開発を手がけてきた。なかでも千葉県佐倉市の「ユーカリが丘」はその成長管理型の街づくりをテレビ番組「カンブリア宮殿」が特集 し、国内外の自治体や企業関係者の視察も相次ぐなど注目を集めている。

林氏 ユーカリが丘は1979(昭和54)年の分譲開始以来、人口が増え続けています。広さは245ha、東京ドーム約60個分。年間200戸の定量分譲を守っており、2017年8月現在、約7500世帯18500人がお住まいです

人口が増え続けるのには仕掛けがある、と林氏は語る。その一つが山万が独自に導入した「ハッピーサークルシステム」だ。たとえば高齢者が配偶者の死によって一人暮らしとなった場合、現在住む家を査定価格100%で山万が買い取る。高齢者はその資金を元に山万が分譲する物件を購入し、ユーカリが丘内で住み替えできる。元の家は新築同様にフルリフォームされ、若い子育て世代向けに再販売される。

林氏 このシステムのおかげで若い世代は新築の約3割安程度でマイホームを購入できる。高齢者は安心して住み替えができる。街の新陳代謝にも一役買っています。山万では福祉支援事業や子育て支援事業にも以前から力を入れてきました。またすべての住居から徒歩10分以内に駅を配置した山万ユーカリが丘線を敷設し、近年では高齢化に対応したコミュニティバスも整備しました

山万は本来、行政が担当するインフラ整備を自前でおこなっている。なぜそこまでして民間企業が街づくりに主体的に関わるのか。

林氏 幸せを実感できる街をつくるには、ある程度の物質的な豊かさが必要です。しかし経済成長はある程度の規模に留め、そこで生きて行く術を日本人はこれから学ばなければならない。そのために不動産自体の価値を上げ、街全体の資産価値も上げていく工夫をしているのです

魅力的な郊外の条件は「仕事の選択肢が多くて働きやすく、昼も夜も楽しめること」

引き続き行われたトークセッションでは、「SUUMOマガジン」編集長の田辺も登壇した。

田辺氏 魅力的な郊外の条件は何だと思いますか?

三浦氏 自然がミックスした景観の良さ。それに仕事の選択肢が多くて働きやすく、昼も夜も楽しめること。そのためには商業地も含めたタウンマネジメントが必要です

林氏 魅力的な街にはハードとソフト、双方をメンテナンスする機能があります。それを構築できたところには人が集まり、少子高齢化などの社会問題も解決しやすくなる。郊外にはまだ人のつながりが残っている。「向こう三軒両隣」に近い関係を取り戻した街をつくりたいですね

田辺氏 具体的にはどうすればいいでしょうか?

林氏 ユーカリが丘では現地のエリアマネジメントグループのスタッフがご家庭を一軒一軒訪問しています。要望をうかがったり、ライフステージの変化の相談にも乗ったりして、生活シーンが変わっても住み続けられるお手伝いをしています

三浦氏 米国だと「ホームオーナーズアソシエーション」という住民のオーナー組織とそれを手伝う会社が協力して街の景観や資産を維持管理し、向上させていくのが通例です。街の運営の仕方を国内外の先進事例から学ぶべきです

など、住民と企業が協力して街の資産価値を上げている事例についてトークが繰り広げられた。郊外の人口減少にSUUMOはどう向き合うべきか。そのヒントを探ろうと、参加者たちが質疑応答終了後も質問を熱心に投げかける熱い勉強会となった。