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教育から住まいのマーケットを変える。
仙台の企業とタッグを組み
斬新なコンテンツで仕掛けにいく

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  • 2019年5月10日

全国に支社・拠点を持つリクルート住まいカンパニー。クライアントやカスタマーから期待されているのはメディアへの出稿提案だけではなく、エリアが抱える“不”の解消だ。当地ならではの課題を発見し、解決に導くコンサルティング力も、営業に期待されているスキルのひとつである。

しかし、地域ごとによって課題は多種多様。また、どんな施策を講じるかも営業個々の自発的なアイデアや行動に委ねられ、確固とした成功パターンがあるわけではない。ゆえにゼロからイチを考えることを厭わず、挑戦する姿勢が求められる。今回、紹介する真木健自(まき・けんじ)さんは、仙台の新築分譲マンション領域の営業担当 であるが、「教育課題」という切り口から住まいのマーケットを変えるソリューションを生み出した。それは、どのような取り組みだったのだろうか。

仙台は全国下位の学力。親世代の不安を住まいの観点から解消できないか模索

不動産会社での仲介営業を経て、5年前にリクルート住まいカンパニーにやってきた真木さん。新築マンション領域の営業として首都圏で経験を積んだ後、仙台支社へ異動。異動後は、大手から中小のマンションデベロッパー13社を担当していた。

異動になった直後の2017年12月。販売支援だけでは解決できない根本的な問題に直面したという。

「仙台の新築マンションマーケットは、慢性的な供給過多状態に陥っていました。また、仙台駅の西口が都心エリアと呼ばれて いるのですが、競合物件がひしめいており、物件の差別化ができない状態。狭いマーケットの中で、担当するクライアントから888戸の供給が予定されていたので、クライアントも私もこのままでは、いつか売れなくなるという危機感を募らせていました」

真木さんが担当するクライアントの中でも、とりわけ強い危機感を持っていたN社仙台支店は45年の歴史があり、マーケットでもひと際存在感を放っていたクライアントだが、ハイブランドかつ高価格帯のマンションを取り扱っていることもあり、先行きに不安を抱えていたという。

この課題をどう解決すればいいのか、そして何よりカスタマーの利益につなげるためにはどうすれば――。生の声を拾い、思考の積み重ねを通して、ひとつの糸口が見えてきた。

「カスタマー、クライアント、そして地域住民の声を拾っていくと、教育課題が見えてきたんです。ある雑誌の調査によると、全国の市区町村のうち仙台エリアの教育レベルは下位グループに属しています。また、学力だけでなく、教育改革でも掲げられているアクティブラーニングなどの今後必要とされる教育機会も乏しく、親御さんも不安を隠しません。転勤族家庭から首都圏の教育事情を聞いて、焦りも感じていたようです。そこで、市役所を訪ねて、現状をどう捉えているのか、何か打ち手は考えているのかをヒアリングしてみたところ、目の前の課題で一杯一杯な様子が窺えました」

リサーチを通して、民間企業主導で教育課題に取り組む余地があると考えた真木さん。クライアントが供給するマンションのターゲットもファミリー。さらに、クライアントはデベロッパーとしてマンションが建つ地域に貢献したい、密着したいという意欲も高く、積極的なコミュニケーションを志向していた。そのため、カスタマーの教育課題解決にも積極的になってくれるはずだと踏んだ。

「ファミリーが抱いている教育課題に ついて、『このマンションに住めば解決するよね』と思っていただくという切り口から販売促進を目指せないかと考えました。販売予定の物件は特別安いものではないですし、他社と比較してもそこまで仕様の差もありません。となると決め手に欠けるので、プラスアルファとなる何かをつくりたいとも思っていました」

仙台に根差した企業6社とクライアントの架け橋に

目指す方向性が定まったところで、コンテンツづくりに動き出すことに。888戸のうちの1物件は2018年5月頃から広告展開を予定しており、それまでに何かしらのかたちにするべくスケジュールを切った真木さん。

クライアントや関係者とのブレストや試行錯誤を重ねた結果、仙台ならではの地域教育スキームをプロデュースするため、「リクルート住まいカンパニー」×「マンションデベロッパー」×「在仙優良企業6社」による施策「まちスク」のプランを練り上げるにいたった。

具体的なプログラムは、仙台に本社を置く企業に協力パートナーになってもらい、職場訪問や見学によって自発的にキャリアを考えられるようにするというもの。協力パートナーは新聞社の河北新報社やJリーグチームのベガルタ仙台など錚々たる顔ぶれ。子どもたちの職業観や考える力の養成を目標にした内容となっている。

また、プログラムの作成は仙台を代表する教育専門家で、INTILAQ東北イノベーションセンター長の佐々木大氏に依頼することが決定した。

「佐々木さんとのお話で出てきたのが、『2020年問題』です。センター試験が廃止になり、自分の気持ちを言う、相手の意見を聞く、物事に挑戦するといった非認知能力が求められる試験に変わります。それを身につけるためには、小学校・中学校の教育が変わらないといけないとのこと。さらに深掘りすると、能動的に学ぶことができるような学習方法『アクティブラーニング』が必要になることが分かりました。首都圏にはそうした学習を後押しする施設が充実していますが、仙台には少ない。そこで、『まちスク』というコンテンツが、打ち手になればいいと考えました」

年間約10回のプログラムが開催され、新築分譲マンションに居住すると自分の好きなプログラムを選び、無料で参加することができる。

「現在、協力していただいているのは6企業。プログラム1回ごとに1つの企業に訪問するかたちで、2カ月に1回開催しています。プログラムを構成するうえでこだわったのは、在仙企業であるかどうかです。支社が仙台にあるのではなく、仙台が本拠地であり、地域に密着している会社であることを条件に考えていました。それは、我々リクルートとしても、クライアントとしても『地元に強い企業と組み、仙台の街を一緒に盛り上げたい』という想いがあったからです」

媒体営業の垣根を超えて生まれた「まちスク」。一人では決して実現できなかった

プログラムの第一弾は、2018年5月に実施。本来は、入居がはじまる2019年3月以降に運用するべきプログラムだが、「まちスク」の認知を高めるため、あえて先行してスタートさせた。物件に来場したカスタマーに「まちスク」に関してアンケートをとったところ、約8割が「非常に興味がある」と回答したそう。反響も上々で、新聞社やケーブルテレビにも取り上げられた。

とりわけベガルタ仙台のプログラムは、応募開始2日間で30名の定員枠が埋まるほどの盛況ぶりだったという。現在もプログラムは展開しており、定員を100名まで増やせないか協議しているとのこと。また、協力パートナーも増えていきそうだという。

コンテンツをまとめ上げたのは、半年にも満たない期間。これだけのプロジェクトが実現したのは、真木さんの行動力と提案力、周囲を巻き込む力があってのことだろう。

「もちろん会社からやって欲しいと求められた取り組みではありません。では、なぜ頑張ったのかというと、仙台と東京のギャップをとても強く感じたからです。東京であれば戸建てよりも、最初にマンションを探す人が多いかもしれません。でも、仙台のカスタマーはまず戸建てから検討して、『高いから仕方なくマンションを考える』という傾向が強いんです。にも関わらず、マンションの価格が戸建ての価格を超えてしまっている。そうなるとマンションを買う意味がないわけです。実際にマーケットデータなどを見ていくと、ちょっとずつですけれど売れ行きが下がっていました」

見方によっては、マンションデベロッパーであるクライアントが率先して解決するべき課題ともいえる。しかし、クライアントも人材不足でとにかく目の前の物件を売ることがミッションであり、それ以上のことに時間が割けない現実もあった。

「未来を見据えた打ち手を考えられるのは、全国のマンションマーケットに精通したSUUMOの営業しかいないと実感しました。メディアの広告営業にとどまるのではなく、むしろ我々のようなポジションだからこそ、企業と企業をつなげ、新しいコンテンツや価値をマーケットに投入することができるんです」

新築マンションが好き。だからこれからも魅力を伝え続けたい

軌道に乗りはじめた「まちスク」。黒子の功労者である真木さんは、この取り組みの背景にあるモチベーションについて、「私は臆病ですし、失敗も怖い。だから大きいことをしてやろうなんて気はまったくありませんでした」と話す。

「ただ」と、こう続ける。

「使命感だったのかもしれないですが、私が動かざるを得ない状況だというのはひしひしと感じました。自分がやらなければ、仙台のマンションマーケットが沈んでしまう。だから、全力で向き合った。その結果としてコンテンツがひとつできたと思います」

コンテンツがかたちになるまでの4か月間、稼働に掛かった人件費が別途クライアントから支払われるわけではない。その間、マネタイズは一切できないわけだが、「カスタマーのためになることなら挑戦をいとわない」というリクルート住まいカンパニーならではの文化に背中を押されたと真木さんは振り返る。

「リクルート住まいカンパニーで、クライアントの言いなりになる営業はほぼいないです。マーケットを知っているからこそ、事実に基づいた論理的な考察ができる。それは、やはりリクルート住まいカンパニーのスケールメリットがあるからこそだと思います。言いなりになって広告を制作しても効果がないことは目に見えています。とはいえ、日頃の営業活動も、『まちスク』に関しても、自分一人でできたことではありません。制作などを担当してくださったリクルートコミュニケーションズの協力があってこそです」

最後に、これからやってみたいことについて聞いてみると「とにかく新築マンションが好きなんです」と、次のように続ける。

「ビジネスパーソンとしての私のアイデンティティーは、“新築分譲マンションのメディア営業”にしっかり根差しています。だからこそ、『買うならやっぱり夢のマイホーム。戸建>マンション』という地方の カスタマーのマインドを変えていきたい。マンションは立地条件やセキュリティ、管理において戸建よりもいいところがたくさんあります。 なので、東京ビッグサイトで開催されるような『就活フェスタ』の、新築マンション版を手掛けてみたいという想いがあります。学生がどこの企業がいいかフェスタで探すように、住宅を買おうと思ったら行くイベントをつくることで、検討段階の初期にマンションの良さを知ってもらいたいですね 」

新たな機会創出の第一歩として、この春には一般社団法人仙台ママナビと協働で、子育て中の女性をターゲットにした「ママフェスタ」を開催。ママ起業家のブースや子育て専門家の講演を設けると同時に、複数の物件を見学するツアーを企画した。家の購入について興味はあるけど迷っている人たちの背中を押す取り組みとあって、クライアントからも高評価だったようだ。

営業と一括りにしても、企業の方針や仕事上の立場によって、実現できることや任せてもらえることはさまざまだろう。しかし、真木さんのように仙台というマーケットにインパクトをもたらし、大きなうねりをつくれるのは、カスタマーが幸せになれる住まいと暮らしの在り方を追求しているリクルート住まいカンパニーならではかもしれない。真木さんが、これからの仙台の暮らしをますます魅力的にしてくれるはずだ。