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データ活用により街のイメージを向上させるための地方公共団体向けシンポジウム ~リクルート×総務省「Machi.Data.Matching」レポートvol.02~

  • 対談
  • 2016年11月11日

「オープンデータの活用」が叫ばれて久しい。国や地方自治体が持つ公共データを開放し、広く活用していこうというものだ。誰もが自由に閲覧できるだけでなく、データを編集・加工し、拡散することが公共の利になるという考え方である。

オープンデータの名のもとに公開されるのは、たとえば地図データや保育園の数、公園の数、公衆トイレの数、Wi-Fiの設置状況など多岐にわたる。そのいくつかは見せ方の工夫次第で「街の魅力」として認知され、大きなプロモーション効果を生む可能性を秘めている。

2016年8月23日、そんな街データの「利活用」について考えるシンポジウムが開催された。オープンデータを推進する総務省と、メディアを通じて街の魅力を伝えてきたSUUMOが連携。オープンデータにより街のイメージを向上させる方法について、様々な知見やアイデアが語られた。


オープンデータを街の魅力向上、シティプロモーションに活用するには?

「データ活用により街のイメージを向上させるための地方公共団体向けシンポジウム~Machi.Data.Matching」と題された同シンポジウム。「シティプロモーションにおけるオープンデータ利活用について」と題したプレゼンテーションが行われた前半(vol.1)に続き、後半ではオープンデータを使ったシティプロモーションに先進的に取り組む地方自治体が登壇。具体的な事例をもとに、そのノウハウが披露された。

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オープンデータで市民の課題を解決/横浜市政策局政策部政策課担当係長・関口昌幸氏

まずは横浜市の関口昌幸氏(都市戦略本部シティセールス部主任)が登壇。市民とともにオープンデータを活用した街づくりを行い、市の魅力向上につなげてきた取り組みを紹介した。

「オープンデータといっても、ただデータを出すだけでは民間企業やNPO、市民のみなさんがそれを活用してくれないですよね。活用しようにも、どうすればいいのか、どんなアウトプットにつなげればいいのかがわからない。これが、なかなかオープンデータが進まない1つの理由なんです。

ただ、横浜の場合は運がいいことに、市としてオープンデータに取り組み始めた最初の段階で『行政がデータを出せばこういうかたちで活用してくれます』という民間団体があったんですね。これが『オープンデータソリューション発展委員会』です。地元の情報系のNPOの方々とか、シビックテックをやってるようなエンジニアの方々、街づくり系のNPOの方々とか、本当にいろんな方々が集って、アイデアソンやハッカソンを開催しました。データを活用しながら、リレーマラソンのように半日から1日、場合によっては泊まりこんでアイデアを出し、それをアプリにしようじゃないかというイベントをやってきたんです。

たとえば大学の先生や学生さん、エンジニアたちの手で“横浜市のみなとみらいに行くと、昔の横浜の風景が映るアプリ”を作って、街歩きイベントを行ったこともあります。今の「Pokémon GO」で使われているようなARの技術を使ったものです。

行政がデータを公開すれば、民間の知恵と力、技術を駆使してアプリを無償で作り、しかも市民を巻き込んだイベントにもつなげてくれる。ひいてはそれが街のプロモーションにも使えるわけです。当時のこうした試みはメディアに取り上げていただき、オープンデータって面白いということで話題にもなりました。

ただ、これだけだとやはり一過性のイベントに終わってしまうんですね。本当の意味でオープンデータを価値あるものにしていくためには、恒常的な仕組みが必要なわけです。

それはたとえば、データを活用しながら地域課題を解決していったり、地域の経済を活性化したりするプラットフォームです。

そこで横浜市では、『LOCALGOOD YOKOHAMA』というICTを活用したプラットフォームを作りました。まず、オープンデータを活用して地域の課題やニーズを把握して“見える化”します。それをクラウドファンディングで広くインターネットを使って民間で資金調達し、プロジェクトを立ち上げて課題を解決していくというICTプラットフォームです。行政は一銭もお金を出さずに、民間企業やNPOさんが、システム構築から運営まで全部やってくれました。行政はデータを出しただけです。

LOCALGOOD YOKOHAMAは、市民の方々がスマホやタブレットのアプリで『うちの地域にゴミが多い』『高齢者がたくさん住んでて……』『ニートや引き起こりの方がいらっしゃる』といった、地域の課題を投稿すると、3Dマップ上にそれが全て反映されます。その際、課題だけが投げ出されるんじゃなくて、それを解決したい人も一緒に3Dマップ上で反映される。

課題をみんなで共有し、それに基づくデータを入力して『その課題を解決しよう』というプロジェクトの方々から手が挙がったら、インターネット上だけじゃなくて地域の場のなかで、さまざまなかたちで対話の場を作りながらプロジェクトを立ち上げる。そのプロジェクトに補助金や委託といった税金を投入するんじゃなくて、その課題、プロジェクトに共感する市民から広くお金を集めてプロジェクトを成立させるというクラウドファンディングの手法や、より課題に共鳴する人たちを集める、人材をマッチングさせる手法を持った、一連の総合的なICTプラットフォームになっています。

LOCALGOODが立ち上がってから2年間経っているんですが、2年間で15のクラウドファンディングのプロジェクトが成立して、トータルで1,000万円を超えるお金が集まりました。これまで行政単独ではできなかった、行政単独ではお金がなかなか出せなかったところで、オープンデータをうまく活用してプロジェクトを回す仕組みができていると思います。

もう1つ、データを活用しながら都市の魅力を向上させていくためには、“人をどう育てていくか”ということが、ものすごく大事なポイントなんですね。

そこで、横浜市では高校生や専門学校生、大学生と一緒になって、先ほど言ったアイデアソン・ハッカソンを通じて、地域課題解決や街の魅力向上につながるようなアプリコンテストを3年前からやってきました。その結果、たとえば高校生1年生のグループが『A-SENKYO』という、若い人たちの投票率をアップさせるためのアプリを開発したり、大学生が横浜市内のどの地域にどんな災害が多いのかを、市民の人たちにわかってもらうビジュアライズ作品を作ろうとしたり、様々なアイデアが生まれ、それがLOCALGOODに載せられてきています。

本気でデータを活用し、街の魅力を向上しよう、人を育てようと思えば、そんなに時間がかからず、金もかけずにできるんです。知恵と工夫です。横浜市はそれにチャレンジしてきたということですね」

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大宮住民はナポリタン好き? 数字データを魅力的に伝える編集の仕方/さいたま市都市戦略本部シティセールス課・中村満枝氏

続いて登壇したのは、さいたま市の中村満枝氏(都市戦略本部シティセールス部主任)。“意外なデータ”を掘り起こすことで地元の隠れた魅力を伝えるノウハウが披露された。

「さいたま市では今年度、定住者を呼び込むために市内での生活が想像できる冊子を作成しており、そのなかで様々なランキングデータを活用しています。特に総務省の『家計調査』、リクルートさんの『住みたい街ランキング』。今は改修中で見ることができませんが、経済産業省の『生活コストの「見える化システム』ですね。

まず、家計調査の市内の消費動向を見ると、さいたま市民はスパゲティ購入額が1位、トマト購入額が4位。つまり、ナポリタンをよく食べるということがよく分かります(笑)。笑っていただいて有難うございます。確かに、これだけでナポリタンに結びつけるのは強引ですね。でも、じつは大宮では『大宮ナポリタン』という新名物をこれから育てていこうとしていて、冊子でも紹介しています。データをそのままの形で出すのではなく、地域の名物などと紐づけて興味を持っていただけるよう工夫することが大事なのではないかと思います。

住みたい街ランキングでいえば、関東全体のランキングでは埼玉県は大宮駅の21位が最高位です。関東21位というと少し微妙ですが、『県内1位』と言い方を変えると『大宮すごい』となりますよね。そして、私も驚きなのですが、さいたま市は『ショッピングセンターまでの距離の近さ』が全国1位なんです。こういったランキングも、出し方を工夫することで市の隠れた魅力のPRにつながる大切なデータだと感じております。

冊子では、こうしたデータにちなんだ市内での暮らしのイメージを『○○さんファミリーの1日の過ごし方』と題して紹介しています。たとえば、小学生の子どもがいるAさんファミリーの一日は“まず、大宮ナポリタンを食べて、氷川神社に行き、大宮公園を通りながら、NACK5スタジアムでJリーグ・大宮アルディージャの試合を観るといったモデル。

中学生の子どもがいるBさんファミリーの場合は“コクーンシティにある「MOVIX埼玉」で映画を見て、さいたま市で採れたヨーロッパ野菜を使っているお店でランチを食べて、最後に市内の温泉施設に行くといったモデルです。

このように、県内1位、県南で1位といった特徴のあるデータを集めて、ターゲットに添う表現をしていくことがシティプロモーションには必要だと感じています」

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街の隠れた魅力を発掘し、SUUMO上で公開

今回のシンポジウムは、総務省とSUUMOが連携してオープンデータ活用を推進していく取り組み「Machi.Data.Matching」のキックオフイベント的な位置づけでもある。

今後は10月から定期的に地方公共団体のシティプロモーション関係者を集め、ワークショップ形式のイベントを実施していく。

ワークショップでは住みたい街ランキングの詳細データ、各自治体のランキングや、シングル、DINKS、ファミリーごとの順位、なぜ住みたいかの理由までが事細かに共有される。あるいはSUUMO検索のログデータ、実際にその街をどれくらいの人が検索しているかといったページビューも公開し、データを元に街の魅力を探っていくという。

そこに各自治体のオープンデータを組み合わせ、最終的には街の魅力を伝える記事を制作。SUUMOのウェブサイト上で公開するという流れだ。

オープンデータを活用した産学連携のシティプロモーション。今後の展開に注目だ