2018.11.02

不動産市場にものびるWeChat経済圏~チャットで不動産が売れる時代~

日本国内で最も多くのユーザーに利用されているメッセージングコミュニケーションアプリといえば、誰もが「LINE」を挙げるだろう。だが、お隣の中国に目を向けて見ると、「WeChat(微信)」が今も成長を続けている。

このWeChat、数年前から不動産が売れている事例が出てきているという。
この背景にどのような要因があるのだろうか。海外のマーケティングの分析記事を参考にしながら見ていきたい。

月間10億ユーザーを突破した「WeChat」

日本では「中国版LINE」という認識が広まっているWeChatだが、LINEと同じく、メッセージ機能を起点にその事業領域を拡大してきた。

メッセージや無料通話、ビデオ通話、ニュース配信だけではなく、決済サービスの「WeChat Pay(微信支付、以下:WeChat Pay)」を保有し、ユーザーはネット上の買い物だけでなく、光熱費の支払いや電車代・タクシー代まで決済できるようになっている。このモバイル決済サービスの仕組みは実店舗への影響力も着実に強めている。

今や、世界中の多くの企業がWeChatの企業アカウントを作り、中国国内の消費者に商品の販売やサービスの提供を行っている。WeChatが作り上げたのは単一のアプリではなく、新たな経済圏と言っても過言ではないだろう。

WeChatで海外の不動産を購入した事例

不動産の購入がWeChat上で始まっている点も、上記WeChat Payの普及が深く関係している。「そもそもSNSやメッセージングアプリ経由で不動産を購入する人がいるのか?」という疑問を抱く人は多い事だろう。

中国のマーケティング情報ポータルである「Marketing China」の記事によると、中国の不動産ポータルはデザインや仕様が質素で、ダイナミックなイメージ写真が少なく、ユーザーとコミュニケーションを図る仕組みがないとあるが、それだけでユーザーが流れて不動産が売れるというのは少し日本人には考えにくい話題である。

参考1:WeChat The Best Social Media to Promote Real Estate in China - Marketing China

しかし、「WeChat上では仲介会社や販売会社がユーザーからの質問に丁寧にチャットで答えたり、より詳しい踏み込んだ情報をやり取りしたりすることができる」点によって、中国の不動産市場に存在していた情報の非対称性をWeChatが解決して、それによってオンライン上で購入に至っているというのだ。

事実、WeChat 上で700万円以上($7.7 million U.S.)の不動産の売買が成立したケースも存在し、その際にはWeChat Payで手付金を支払ったとしている。

参考2:Aussie real estate agents sell to Chinese on WeChat - AIM Group blog

WeChatが提示する新たなビジネスチャンス

ネットショッピングが急速に普及した2009年以来、中国の消費者は偽ブランド品の存在に頭を抱えてきた。

だからこそ、Webサイト上の静的な情報だけではなく、販売側との動的なコミュニケーションを行うことで、信頼性を見極めているということも考えられる。日本市場においては偽ブランド問題がひどくなくとも、既に店頭やECでの接客や情報補足を行うオンラインサービスが流行っている。例えば、ソフトバンクではLINE公式アカウントから簡単な質問や契約状況の確認までLINE上で完結するような仕組みがあったりする。 更に、hachidorikarakuriのようなスタートアップでFacebookメッセンジャーやLINEで公式アカウントのBOT機能、およびカスタマーサポートとチャットできるサービスが国内でも出てきている。

前述はあくまで一例に過ぎないが、更にもう1歩店員と顧客の直接のオンラインコミュニケーションが進めば中国同様の高額商品の取引、決済が起こる可能性は十分にありうるだろう。

また、今回の事例は中国国内の不動産だったが、WeChat上で行われたコミュニケーションを通して消費者の疑問や不安の解消ができるのであれば、上記の国内での類似の仕組みが誕生するということとは逆に、日本国内の不動産事業者が中国のマーケットへ同じスキームを持って営業参入できる可能性もあるだろう。

インバウンド/アウトバウンド両側面でこのモデルがそう遠くない未来に日本の不動産事業者に来るかもしれないと筆者は考えている。

参考1:Marketing China
参考2:AIM Group blog