李 石映雪
データサイエンティスト
(機械学習エンジニア)

徳永 優作
SUUMOプロダクトオーナー
(グロースハッカー)

CROSS TALK

李 石映雪
データサイエンティスト
(機械学習エンジニア)

徳永 優作
SUUMOプロダクトオーナー
(グロースハッカー)

先行事例のないものをいち早く世の中へ。プロダクトづくりにコミットするデータサイエンス

データサイエンティストとして、SUUMO上に表示されるデータのパーソナライズを推進してCVRの改善に取り組む李石映雪と、李とほぼ同期入社で、仕事でタッグを組むことも多い横断UXデザイングループの徳永優作。主にデータを扱う者と企画・推進する者の異なる視点から、SUUMO及び不動産業界におけるデータの重要性や、チャレンジすべき課題などを訊いた。

反響予測やランク学習モデルを導入し、パーソナライズされた情報を提供

私はデータサイエンティスト(機械学習エンジニア)としてSUUMOのCVR改善を行うのが主な仕事です。新卒で入社した2013年ごろは、AIや機械学習などを導入している企業はまだ少なかったのですが、私自身はすごくその分野に興味があって大学で研究をしていました。そしてその知識を活かして、よりサービスのコアな部分にコミットしていきたいという思いからリクルート住まいカンパニーに入社したんです。

徳永私は横断UXデザイングループというところに所属していて、デザイナーやエンジニア、データサイエンティストの方たちと協力しながら、企画の立案から実装にまでに携わっています。ひとつの案件に対して一緒に企画していきながら、私はUI・UXの部分を検討し、李にはその裏側にあるロジックの部分を構築してもらっています。

例えば、ある一定期間、賃貸物件を探している学生さんに対して、SUUMOにアクセスする度に毎回「賃貸」以外の「新築マンション」や「注文住宅」といったメニューが並んだTOPページを表示させる必要は無いと思うんです。その人の属性に合わせたTOPページを表示し、不必要な動作を減らすことでユーザーのストレスを減らすことができるのではないか、という仮説からスタートした施策があります。

この施策はAndroidでは既に実装されていて、CVRが大幅に改善しました。従来の不動産ポータルサイトでは、ユーザーが目的の情報に辿り着くまでに何回もボタンクリックや選択を繰り返さなければいけませんでした。それを改善するために、前回ユーザーがサイトを見た時の閲覧履歴を元に、再び訪れた時にそのユーザーの属性に合わせた情報が表示されるようにする施策をSUUMOでは進めています。 そのエリアの家賃相場と比較して割安な物件や新着物件を「クリックされやすい」情報と判断して上位に表示させる「ヒューリスティックモデル」から、ユーザーの検索条件や閲覧した物件を学習させ、その人が好みそうな物件を上位表示させる「予測モデル」にシフトすることで、よりパーソナライズされた情報を提供することができるのです。

ただ、使い慣れたSUUMOのUIを突然大きく変えると、ユーザーも戸惑います。そのため、テストを重ねてユーザーの理解と共感を得ながら、より使いやすいサービスへと変えていきたいと考えています。

データから情報を編集し、ユーザーに新発見を届ける

私たちは週に1回はミーティングをするのですが、プロジェクトはお互いに企画を持ち寄るところから始まります。企画側から「こういうUIはユーザーの受けが良さそう」と提案してもらって、それを構築するロジックを検討したり、逆にこちらから「こういうデータを元に作ったアルゴリズムを導入してみては?」と提案する場合もあります。例えば、田町で家賃15万円以内の賃貸物件を探しているユーザーが品川の物件に内見予約することが多いというSUUMOのデータがあるとします。そのデータを元に「田町で賃貸物件を探しているユーザーは品川で反響することが多い、などのパターンがよく見られるので、自動的に類似エリアを提示することはユーザーにとってメリットがあるのではないか?」といった提案がこちらからできます。

徳永ユーザーによって何を表示すればいいのかはさまざまです。ただし、ユーザーの関心に応じた情報を優先的に表示しつつ、賃貸を探しているユーザーに対しても、好みに合いそうな中古マンションの記事を出してみるなどの取り組みも検討しています。

検索には「絞る」フェーズと「広げる」フェーズがあると言われています。理想の物件が見つからないユーザーに対して、一緒に「広げる」方法を考えることは大事だと思います。例えば、月島で物件を探している人は、もしかしたら勤務地からのアクセスといった利便性以外にも“下町が好き”という理由があるのかもしれません。それなら月島以外に清澄白河や浅草の物件を紹介することで、ユーザーに新たな発見を与えられるかもしれません。ユーザー自身ではわかり得ないことや気づかないことも、他の多くのユーザーのアクセスログを解析した結果をフィードバックすることでより有益な情報を提供することができます。膨大なアクセスログを元に情報を編集して新たな発見をユーザーに届ける――それは私たちデータサイエンティストが提示できる新しい価値だと思います。

徳永住まいの情報に関しては「SUUMOに来ればきっと解決してくれる」という状態にまで持っていきたい。そのためには賃貸を探している方に対してその情報だけでなく、“自分が探しているもの以上の情報”をどう提案できるかが大事になってくると思います。

時代的にも、終身雇用の会社で働いて居住地もスタイルもあまり変わらなかった一昔前と比べて、働き方の変化から住まいを変える必然性は高まっていると思います。住み替えのニーズが増えると、他の領域では当たり前になりつつあるパーソナライズは不動産領域でもどんどん重要になっていきます。SUUMOにはたくさんのクライアントやカスタマー、そしてこれまで蓄積してきた膨大なデータという強みがあります。そのデータを活用し、適切なサービスでプロダクトに還元していくのがデータサイエンティストの役目の一つだと思います。

NO.1不動産メディアで先行事例のない施策を打つ

今はWEBやアプリで検索した後に不動産屋さんに足を運んで、そこでもまた似たような話を聞かれて……ということがほとんどだと思います。それは不動産業界が、オフラインでしか知り得ない情報が多いという特徴があるからですが、テクノロジーの力を使って可能な限りオンライン化を推進することで、不動産会社とユーザー双方の生産性向上につながればいいなと思います。

徳永不動産業界はユーザー側と業界側の情報の非対称性がまだ大きいので、初めての引越しや一人暮らしの方にとっては知らないことが多い。そんな方たちをフォローできるサービスやプロダクトを今後も作っていきたいです。「衣食住」といったライフスタイルに関わる領域の中でも、「住」はデータのパーソナライズ化が遅れているので、その意味でも、データサイエンティストのような人材は業界全体にとっても重要になるかと思います。

正直なところ、機械学習を採り入れたプロダクトは他社もやっていますし、自分で作ること自体もそこまで難しいことではありません。特に小規模な新規サービスにとって、導入するハードルが下がってきています。ただし、すべてのサービスが機械学習にとって根本的に重要な、高品質かつ大量のデータを持っているわけではありません。一方でNO.1不動産・住宅情報メディアであるSUUMOには膨大なデータがあります。高いサービスレベルも要求されますが、それを活用できる開発体制が整っていることは、エンジニアとして大きな魅力・やりがいでもあります。

徳永私の目から見て、李をはじめとするリクルート住まいカンパニーのデータサイエンティストがすごいと思うのは、ゴールに忠実なところと、スピード感があるところ。前者で言うと、プロジェクトを進めていくと当初の目的からズレていくことは多々あるのですが、そんな時でもゴールをブラさずに臨機応変に対応してくれる。後者に関しては、不動産ポータルサイトのコモディティ化が進み、先手先手を打たなければならない状況になっている中で、データサイエンティストが企画の構想段階から入ってくれて、データや仮説を元に、スピード感を持ってサービスやプロダクトなどの形にしてくれるんです。

施策でわかりやすく効果が出るのは、すでに成功しているものを真似すること。ただしそれでは先が無いので、私はデータサイエンティストとして先行事例のないものをどんどん考えていきたい。また、データサイエンティストになりたい人はそもそも分析すること自体が好という方が多いと思うのですが、それ以上に自分の持っている技術を世の中にフィードバックして、インパクトを与えることが楽しいと思える――そんな人にはとても向いていると思います。